「建国記念日」は誤り?「建国記念の日」との違いとは?
投稿日:2021年01月06日
カテゴリー:シリーズコラム
投稿者:
マッサン
2月11日は国民の祝日のひとつである「建国記念の日」です。
よく間違われる「建国記念日」とは違い、“の”が含まれているのが特徴です。
ではなぜ、“の”が入っているのか、ご存じでしょうか?
この記事では「建国記念の日」と「建国記念日」の違いと、
その意味について紹介します。
1. 『建国記念の日』とは?
そもそも、日本の「建国記念の日」とは、
1966年(昭和41年)に当時の内閣によって制定された、
「国民の祝日に関する法律」に含まれている、国民の祝日のひとつです。
内閣府の公式ホームページによると、建国記念の日の概要は以下の通り。
“建国をしのび、国を愛する心を養う。”
(引用:https://www8.cao.go.jp/chosei/shukujitsu/gaiyou.html)
とされています。
単純に日本の建国を祝う日とされていれば、わかりやすいのですが、
なんだか遠回しな言い方のように聞こえますね。
法令の文章なんて、大体そんなものでしょ。
と思われる方もいるかもしれませんが、
日々、『わかりやすいマニュアル』づくりに注力している筆者にとっては、
少し引っかかりのある文章のように感じます。
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2. 世界の『建国記念日』
日本の『建国記念の日』の話をする前に、
比較として世界各国の建国を祝う日をいくつか見てみましょう。
(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BB%BA%E5%9B%BD%E8%A8%98%E5%BF%B5%E6%97%A5)
■アメリカ|独立記念日(7月4日)
『7月4日に生まれて』『インディペンデンス・デイ』といった、
映画のタイトルでおなじみ、アメリカの建国記念日は、
7月4日の独立記念日(インディペンデンス・デイ)です。
■フランス|フランス国民祭典(7月14日)
Fête nationale françaiseは直訳すると、「フランス国民祭典」。
建国や独立といった文言は含まれていません。
しかし、これはれっきとした「建国記念日」です。
なぜなら、フランス革命のきっかけと言われる1789年7月14日に起きた、
「バスティーユ襲撃」が起源だからです。
■中国|国慶節(10月1日)
経済的な結びつきが強くなったので、皆さんも中国の祝日は気にされていることでしょう。有名なのが「春節」「メーデー」、そして「国慶節」。
中国の大型連休と紹介されますが、正式には「中華人民共和国国慶節」。
長い歴史をもつ中国ですが、1949年10月1日に毛沢東が、
中華人民共和国の成立を宣言した式を起源としています。
■ドイツ|ドイツ統一の日(10月3日)
1989年12月に東西冷戦が終結し、旧東ドイツと旧西ドイツが統合したのが、
1990年10月3日です。
ちなみに、ベルリンの東西を隔て、東西冷戦の象徴とされていた
「ベルリンの壁」が崩壊したのは、それよりも前、1989年11月9日です。
さて、色々な世界の国における『建国記念日』を見てきましたが、
それぞれの国の起こりや大きな出来事を記念して、
それにちなんだ呼称で国家の建国を祝う日とされていますね。
そこで、次項では日本の『建国記念の日』について、
深掘りしてみたいと思います。
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3. なぜ、日本は『建国記念の日』なのか?
ご存じの通り、日本という国は天皇陛下を中心に国を治める、
皇室制を採用している国家です。
この皇室制がいつからあるのかというと、
なんと紀元前660年、初代神武天皇の即位にまでさかのぼります。
ひとつの王族が数千年にわたって統治している国というのは、
世界的に見ても珍しいとされています。
ちなみに、英語圏でエンペラー(皇帝)と称されているのは、天皇陛下だけだそうです。
(参考:https://toyokeizai.net/articles/-/265649)
神武天皇が即位したのは、紀元前660年の1月1日とされていますが、
この1月1日というのは旧暦ですので、現在使われている暦に換算すると、
2月11日にあたります。
つまり、現在の『建国記念の日』というわけですね。
元々、2月11日は1873年(明治6年)に明治政府によって、
神武天皇の即位をもって国家の「紀元」として祝日にすることが定められ、
『紀元節(きげんせつ)』として祝われてきました。
しかし、第二次世界大戦後、日本国憲法にふさわしい祝日として、
紀元節が「建国の日」として盛り込まれていましたが、
連合国軍最高司令官総司令部(=GHQ)により削除されてしまいました。
その後、日本が一国家として回復するにしたがって、
日本の建国を祝う日を復活させる動きが活発になりました。
「紀元節」の復活に賛否両論あるなか、幾度もの廃案と再提案を経て、
建国をしのび、国を愛する心を養う日として、
1966年(昭和41年)に『建国記念の日』が公布されました。
紀元節の復活に反発する意見や、歴史的に神武天皇の存在自体に確証がないという点から、
あいまいな概要の書き方をすることで、
広義的な意味合いで「国家の建国をお祝いしましょう」ということになったのです。
そういった時代背景を鑑みると、建国記念の日における概要文の違和感が、
腑に落ちる気がします。
4.『建国記念の日』と『建国記念日』の誤用を避けるには?
さて、建国記念の日と建国記念日の違いについて、これまでの情報を整理すると、
「建国記念日」は、
日本特有のものに限らず広く世界的・一般的な建国の日を指し示すもの(=概念・カテゴリー)であるのに対し、
「建国記念の日」は、
日本の法令を根拠とする国民の祝日の一つを指し示すもの(=固有の名称)であると説明できます。
とはいえ、さすがに日常会話の中で、
「2月11日は『建国記念日』だねー。」と言われて、
「違います。正しくは『建国記念の日』です。」と言う方は、あまりいないでしょう。
しかし、ドキュメント上で先のような誤用があると、
そのドキュメントに書いてある内容の信頼性は途端に失われてしまいます。
例えば、企業が発信するSNSやメールマガジン、文書などにおいて、
誤字脱字や誤用などが見つかってしまうと、読み手から、
「この企業は文章のチェックもしていないのか!」
と思われ、企業ブランドに対する信用の低下や、
客離れを招いてしまうことにも繋がりかねません。
そのような事態を避けるには、ライターが正しい知識を身に着けておくのはもちろんですが、機械的に誤入力・誤表記を正す、支援ツールの導入が欠かせません。
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