「読点」の打ち方|読みやすい文章の工夫とは?
投稿日:2021年05月21日
カテゴリー:ライティング
投稿者:
Oma
マニュアルは、必要な情報が伝わりやすく、
読み手に誤解を与えないものでなければなりません。
情報を分かりやすく伝えるためのアプローチは、
デザイン・レイアウト・言葉の選びかたなど様々です。
テクニカルライターは、
「どうすれば、より分かりやすい取説になるか?」と考えたり悩んだり唸ったりしながら、
日々、マニュアルを執筆しています。
今回は、あまりフォーカスされることのない
「読点」についての知識をご紹介したいと思います。
読点(とうてん)とは?
文の途中に区切りとして使用する記号(符号)のことです。
日本語では、「、」または「,」を使用し、点(テン)と読みます。
句点「。」と合わせて句読点(くとうてん)とも呼ばれています。
先に言ってしまいますが、日本語の読点には、厳格なルールはありません。
もともと、漢文を語源とする日本語の文章には句読点はありませんでしたが、
明治期に入り、長い文章をより読みやすくするために、
文中に使用する区切り記号として、徐々に使用されるようになっていったようです。
試しに「句読点 ルール」で検索すると、
「こうするとよい」「ああするとよい」という記事はたくさん出てくるのですが、
基本、「読点を使う時は、絶対にこう打たなければならない!」
とは書かれていないのです。
ここでオフィシャルな日本語のルールを示した文化庁の文書、
『新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)』からの引用を見てみましょう。
句読点についての記述は以下のように書かれています。
句点には「。」(マル)、読点には「、」(テン)を用いることを原則とするが、横書きでは事情に応じて「,」(コンマ)を用いることもできる。ただし、両者が混在しないよう留意する。学術的・専門的に必要な場合等を除いて、句点に「.」(ピリオド)は用いない。欧文では「,」と「.」を用いる。 |
つまるところ、
読点の打ちかたは執筆者の裁量に任されている、と言っても過言ではないのです。
※ 余談ですが、今まで公用文の読点には「,」(コンマ・カンマ)が用いられてきましたが、一般の社会生活における日本語表記の変化を反映すべきであるとして、この文書によって、70年ぶりに読点のルールが改訂されたことにより、公用文においても読点には「、」(テン)が用いられるようになりました。
(参考文献:文化審議会建議「公用文作成の考え方」について)
一般的な読点の使い方・打ち方については他の記事や文献を参照していただくとして、
ここでは、私がマニュアルの説明文を執筆するうえで意識している、
わかりやすい文になる読点の使い方を、3つのポイントに絞ってお伝えします。
参考程度にお読みいただければ幸いです。
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次のセクションからは、文を読みやすくする3つのポイントについて解説します。
いずれも、先ほど申し上げた通り、
「こうしなければならない!」という厳格なルールではあれませんが、
文をわかりやすくするためのセオリーとなっています。
1,多すぎず、少なすぎず
突然ですが、ここで問題です。
次の4つの文のうち、読みやすく感じる読点の位置はどれでしょうか?
|
①の文は、文中に読点の無い文です。
②の文は、主語の後に読点を打った文です。
③の文は、主語の後と、動作の区切りに読点を打った文です。
④の文は、全ての文節に読点を打った文です。
おそらく、③が最も読みやすいのではないかと思います。
読点は、多すぎても少なすぎても読みにくいものです。
40文字前後の文に対して、読点は3つまでに留めるとよいでしょう。
※ちなみに、1文あたり40文字前後が、読みやすい長さの基準とされています。
長すぎる文章は読み飛ばされやすくなってしまうので、覚えておくと便利ですよ!
2,「一呼吸」で読めるか
読点が少ないと読みにくいことの原因の1つは、
「一呼吸で読めるかどうか」ではないか、と考えています。
個人差があるかもしれませんが、
私は、何らかの文章を読むときに頭の中で音読することが多いです。
特に、説明書など「情報をきちんと読んで理解しなければ」という場面では、
無意識に脳内で読み上げをしています。
先ほどの例文をもう一度見てみましょう。
試しに頭の中で(または実際に声に出して)音読してみてください。
「フィルターは2週間に一度取り出してお手入れ方法に従って洗浄してください。」
なんとなく、息をつくタイミングが欲しい!と思いませんか?
読点は、文を読み進めるときの小休止の役割も兼ねているのです。
読点がない=小休止できないと、漫然と読んでしまい、
結果的に内容が頭の中に残りにくくなってしまいます。
もちろん、自分のタイミングで区切ることもできますが、
読解にかかる労力は読み手のストレスとなり、また誤読も招きかねません。
読点を的確に打つことで、読み手のストレスや誤読を軽減させる機能をつけることができます。
ここで大切なのは「的確に」打つということです。
どこに打ってもいいというものではありません。
では、どこに読点を打つのか?
次の項で、本記事で最もお伝えしたいポイントを解説します。
3,強調したいことを中心に考える
マニュアルにおける一文は、一般的な読み物と比べると非常に重みがあります。
説明対象の取り扱いをする上で、正しい操作で安全に使い方を示す必要があり、
マニュアルのボリュームを減らすうえでも、読み手の負担を減らすうえでも、
不要な語はなるべく削り、伝えたいことだけを的確に伝えたいからです。
厳選された言葉からなる一文にも、さらに強調したい部分というのがあります。
以下の文章を見てみましょう。
「使用後は必ず電源を切ってコンセントからプラグを抜いてください。」
あなたなら、どこに読点を打ちますか?
①「使用後は、必ず電源を切ってコンセントからプラグを抜いてください。」
こうすると、使用後にすべき操作である、ということが強調され、
「必ず~」以降は一連の動作であるというニュアンスが強くなります。
②「使用後は必ず電源を切って、コンセントからプラグを抜いてください。」
2つの動作を区切るように打つと、「電源を切って」に目が行きやすくなり、
ユーザーには「電源を切らなければならない」ことを強調できます。
③「使用後は、必ず電源を切って、コンセントからプラグを抜いてください。」
①と②のハイブリッド型です。
使用後に行う操作であること、すべきことが2つあることが、それぞれ明確になります。
文脈にもよるため、どれが正解かということはありません。
共通しているのは、強調したいことの直後に読点を打っているということです。
かといって、例えば
「使用後は、必ず電源を、切ってコンセントからプラグを抜いてください。」
「使用後は、必ず電源を切ってコンセントから、プラグを抜いてください。」
という読点の使い方はNGです。
「電源を切る」「コンセントからプラグを抜く」は、
ひとかたまりで意味を成す部分なので、文の切れ目として読点を使ってしまうと、
読み手の読解を妨げてしまい、非常に読みにくくなります。
どうしても「電源」「コンセント」を強調したいときは、太字や下線などを使用する方がよいでしょう。
いかがでしょうか。
このように、普段なにげなく読んでいるマニュアルの文章にも、
こうした細かいこだわりポイントが詰まっていたりします。
とはいえ、
「こんなことまで考えて書かないといけないの!?」
「文章を綺麗にするところまで意識していられない!」
と思われるかもしれません。
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