オンラインでユーザーが求める自己解決のツールとは?
投稿日:2022年10月26日
カテゴリー:Web
投稿者:
S山
家電などの機器の操作方法でわからないことがあった場合、
多くの人は手元のスマートフォンで検索して解決しようとします。
検索結果に出てくるのは大きく2つあります。
一つはPDFの取説(またはウェブマニュアル)、
もう一つがFAQ(よくある質問リスト)サイトです。
取説かFAQか
ウェブの取説は基本的に製品に同梱されている紙の取説を電子化したPDFであることが多いです。
FAQサイトというのは一般的に使用者から寄せられた質問とそれに対応する回答に特化したサイトです。
検索に強いという特長を持っています。
PDFの取説の良さはそれが慣れ親しんだ紙の取説と同じ構成という点にあります。
紙の取説にはどのメーカー、どの製品においても共通するフォーマットというものがあります。
目次があり、各部と名称の説明があり、注意事項があり、章があり、節があり、よくある質問があり、最後に問い合わせ窓口の連絡先がある、といった流れがあります。
取説も書物の一つなので、ざっと流し読みをすることで全体の概要がつかみやすいという特長があります。
私たちは過去の経験から「◯◯とはこういうものだ」という思い込みを作ります。
その思い込みのことをメンタルモデルと言います。
メンタルモデルが継承されることによって、私たちは認知負荷を下げることができているわけです。
迷わずに使える製品は、このメンタルモデルを利用しているものが多いです。
取説においてもコンテンツの構成のメンタルモデルがあるので、どの取説を読んでもほとんど迷うことなく探している項目に辿りつくことができます。
(もし、そうでない場合には早急に取説の改善が必要です!)
FAQの歴史
一方、FAQというのは出自がコンタクトセンターです。
問い合わせ窓口やサポートセンターなど色んな言い方がありますが、直接製品のユーザーから問い合わせを受ける方々が毎度毎度同じ質問を受けるので、それならば問い合わせの前に見てもらえるリストがあれば問い合わせが減るのではないかというところから来ています。
インターネット以前は紙の取説しか情報がないので、その後ろの方に「よくある質問」があり、最後に問い合わせ窓口があるという流れになりました。
インターネットで検索する場合、ユーザーは取説の内容を経由せずに直接FAQに行くようになり、独立したFAQサイトを持つところも出てきたという流れです。
解決を求めるスピードが上がっている
FAQサイトが増えてきたのは、ユーザーの「すぐに解決したい」という欲求が年々高まってきたことと無関係ではありません。
検索サイトで調べればすぐさま回答を得られるという、これまたメンタルモデルが出来上がって、それが強化されているからです。
しかし、FAQのリストですべて解決するわけではありません。
FAQの回答に取説の参照先がリンクされていることもよくあります。
本来ならば取説を読んで理解する、それでもわからないから問い合わせをする、その問い合わせの前に見るのがFAQというのが流れです。最初の「取説を読んで理解する」というステップを飛ばしているため、結局は最後には取説を見るということになります。
とある家電メーカーのFAQの一番目に「取扱説明書はどこですか?」という質問がありました。
これはなんとも微妙な質問で、もともと取説にあった「よくある質問」だったのが独立してしまったことによる質問と言えます。
どこで解決させるか?
ユーザーは多様です。製品の使用に慣れている方もいれば、そうでない方もいます。それぞれの持つ過去の経験が違うので、想定したメンタルモデルが通じない場合も多々あります。
結論としては幾重にもサポートの層を作ることが重要です。
まずは、検索からの入口として取説を充実させることを優先しましょう。
その次にFAQへの導線を確立しましょう。
最後にお問い合わせの窓口につなげることでどの部分でユーザーがこぼれ落ちているかを計測できます。
取説とFAQと両方の自己解決率を上げていくことで問い合わせをするユーザーを少数に留めることができます。
問い合わせ窓口はAIの登場で無人化していく流れにはありますが、まだまだ人件費のかかるところです。
まずは取説の改善を主軸にユーザーの自己解決率を高めていきましょう。
取説からFAQへの展開
取説はあるけれどもFAQはない。FAQは充実しているけれども取説の内容が不十分。
このようなケースは多々あります。
コストの問題もあるのでどちらにも100%コミットできないという事情もあるでしょう。
取説の主管は主に製造・設計部門であることが多く、扱いとしては製造原価です。
一方、FAQはサービス部門が主管で、費用は販管費に分類されます。
このような背景があるので、想像しているよりも取説とFAQが連携を取ることは難しいのが実情です。
しかし、部門間の問題や、費用計上の問題はユーザーには関係がありません。
会社として、ユーザーに対してどのように対応するのかの大方針が求められます。
この問題を解決しないと最高のユーザーエクスペリエンスの実現はかないません。
そうした大きな問題がクリアできたとしても実務問題としてどのように統合を進めればいいのかという問題は残ります。
取説とFAQでは同じ内容を書くにしても書き方が違っていたり、構成や分類の仕方についても異なる部分が多くあります。
マニュアル制作のトリセツでは、
長年の取説制作の経験からお役に立てる知見をご提供できます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。