操作マニュアルの書き方|新人教育を効率化する、わかりやすい手順の作り方
投稿日:2025年12月25日
カテゴリー:業務マニュアル
投稿者:
mare

工業用の大型機械設備や医療用の機器類などのような、複雑な操作が求められる機械には、取扱説明書とは別に、操作方法の説明に絞った内容のマニュアルを作成することがあります。メーカー側があらかじめ提供する場合もあれば、機器を導入した企業などが社内向けに作成することもあります。
ここでは、そのようなマニュアルを「操作マニュアル」として、その有用性について解説していきます。
操作マニュアルの作成時にポイントとなるのが、作業の流れがわかりやすいか、該当箇所がすぐに探せるか、そして「手順がわかりやすく書かれているか」です。
この記事では、操作マニュアルの制作ステップとともに、わかりやすい手順の書き方についてご紹介します。
操作マニュアルが必要になるケース
「手順の書き方」が操作マニュアルの肝
企業が抱える課題と操作マニュアルの役割
操作マニュアル制作の基本ステップ
手順の書き方が重要
改善の実例
改善例1 文章だけで改善
改善例2 デザインも改善
さらに改善するには
まとめ
操作マニュアルが必要になるケース
製品やサービスを提供する際には、必ず「取扱説明書」を作成します。
そこには仕様や安全上の注意事項、使い方などすべての情報が網羅され、製品の基本的な情報を理解するのに役立ちます。
しかし、業務用システムなど高機能のシステムやソフトウェア、産業機械、医療機器などの場合、取扱説明書とは別に「操作マニュアル」を作成することがあります。日常的に作業をする人と管理者が異なり、作業者の知識レベルに合わせたマニュアルが必要な場合や、取扱説明書1冊にすべての情報を盛り込むと分厚い冊子になり、必要な情報を探しづらい、扱いづらいなどといった場合です。
また、製品やサービスの提供企業が作成した説明書とは別に、利用する側の企業自身が実際の業務に即した「操作マニュアル」を作成することもあります。
「手順の書き方」が操作マニュアルの肝
操作マニュアルは、作業者が迷わずに作業を進められるように設計された、実用的なドキュメントです。ここで重要なのは、情報量の多さではなく、作業の流れがわかりやすいか、該当箇所がすぐに探せるか、そして「手順がわかりやすく書かれているか」です。
どんなに情報がそろっていても、手順がわかりにくければユーザーは迷い、誤操作や安全性・作業効率の低下につながります。逆に、手順が明確で理解しやすければ、現場の効率や安全性は大きく向上します。
つまり、わかりやすい操作マニュアルを作るためには、手順の書き方を徹底的に工夫することが欠かせません。企業が抱える課題(人材確保・人材育成、安全確保、品質の安定化など)を解消するためにも非常に重要な要素です。
企業が抱える課題と操作マニュアルの役割
操作マニュアルを制作するにあたってまず理解すべきなのは、製品やサービスを利用する企業が直面している課題です。これらの課題を解決する視点を持つことで、操作マニュアルは単なる説明書から戦略的な資産へと変わります。
- 人材育成の負担増
定年退職や離職などによって熟練作業者が減り、新人教育の負担が増大している。
→ わかりやすい操作マニュアルがあれば、OJTへの依存度が下がり、短期間で習熟できるようになります。 - 品質のばらつき
熟練作業者の暗黙知に依存しているため、製品やサービスの品質が安定しない。
→ 標準化された手順を操作マニュアルに明文化して徹底することで、誰が作業をしても同じ品質を確保できます。 - 安全リスク
危険な工程での誤操作や注意不足によって、事故につながる。
→ 操作内容、操作による結果事象、注意事項を明示することで、現場の安全性を高められます。うっかり行いがちなミスや特に危険な行為はデザインで強調し、より注意を促すことも可能です。 - 教育・研修コストの増大
新入社員や派遣社員が増えると、教育・研修に時間と費用がかかる。
→ 操作マニュアルを活用すれば、教育の効率化とコスト削減が可能になります。中途採用や異動などで知識やスキルを持つ人材が増えた場合も、すぐに即戦力として活用できます。
操作マニュアルは、企業にとって現場改善のツールであると同時に、組織課題を解消する仕組みでもあります。
操作マニュアル制作の基本ステップ
操作マニュアルの制作は、次のステップで行います。
- 情報収集:取扱説明書、仕様書などから必要な情報を抽出する。また、熟練作業者に取材し、実際の手順や作業のポイント、注意事項などをヒアリングする。
- 構成設計:見出しや章立てを整理し、全体構成を決める。
- 表現設計:デザインのルールや基本フォーマット、文章スタイルなどを決める。
- 執筆:作業者目線で簡潔に書く。必要に応じて図や写真を入れる。
- 検証:実際に操作しながら手順を確認し、必要に応じて修正する。
- 更新:製品やサービスの更新、作業内容の変更に合わせて改訂する。
この流れの中で特に重要なのが「執筆」と「検証」です。ここで手順の書き方を誤ると、どんなに情報がそろっていてもユーザーは迷い、誤操作や安全性・作業効率の低下につながります。
手順の書き方が重要
操作マニュアルの価値は「手順がわかりやすいかどうか」で決まると言っても過言ではありません。作業時に手元に置いて常時参照するものですから、とにかく見やすく整理され、ポイントが簡潔に書かれていることが重要です。
そのためには、次のルールに沿った書き方にしましょう。
- 1手順1操作
1つの手順には1つの操作を記載します。 - 情報の種類に合わせた文章スタイル・デザイン
操作内容、操作の結果事象、注意事項、補足情報などの種類に応じた文章スタイル・デザインにすることで、情報の種類を見分けやすくします。 - 順序の明示
手順番号を付けて、流れを明確にします。
結果の記載
操作の結果事象(ランプの点灯、画面表示、音など)を記載することで、操作が確実に行われたことを確認できるようにします。
改善の実例
よくあるタイプの手順説明に、次のようなものがあります。

いかがでしょうか。作業者が行う操作がスムーズに読み取れたでしょうか。
この例のような書き方では、じっくり読み込まないと、どれが操作手順でどれが操作の結果なのか、どれが補足情報なのかがわかりませんね。
改善例1 文章だけで改善
それでは、まずは文章の変更だけで改善してみましょう。

いかがでしょうか。元の文章に比べると、作業者が行う操作が少しわかりやすくなりましたね。
改善例では、次のような変更を加えています。
- 文章スタイルの書き分け
・操作手順:である調、動詞の終止形、能動態
・操作の結果事象:行頭文字「●」付き、ですます調、受動態または自動詞
・場合分けの見出し:行頭文字「■」付き、文末が「~とき」
→各要素の役割が明確になり、操作手順を特定しやすくなります。
- 起動時のランプや画面の動きを細かく記載
→ホーム画面が表示されるまでの間、作業者が安心して待つことができます。
改善例2 デザインも改善
上の例では文章だけを使って改善してみましたが、情報の種類ごとにデザイン(文字サイズ、フォント、フォントのウェイト、行間、各要素間のアキなど)を使い分けると、さらに伝わりやすくなります。

さらに改善するには
ここで実例をご覧いただけるのはここまでですが、たとえば次のような工夫により、さらなる改善が可能です。
- イラスト・写真などのビジュアル素材を追加
製品のビジュアルを追加することで、手順に登場する部品の位置や形状などをわかりやすく伝えます。それとは逆に、イラストや写真を主体とした説明にし、さらに「見てわかる」マニュアルにすることも可能です。
- 手順説明内のボタンやランプをアイコンに
アイコンで視覚的に見せることで、どの部品を指しているのかが一目でわかります。
- 画面の遷移を画面の画像と矢印で表現する
画面中心の操作では、画面の遷移をベースにし、画面ごとに行う操作手順を画面の横に配置することで、どの画面で行う操作なのかが明確になり、迷わず操作できます。
こうした改善を行うことで、操作マニュアルが「使えるツール」へと進化します。
まとめ
操作マニュアルの役割は、製品やサービスの単なる付属資料という位置づけにとどまりません。企業が抱える人材育成の負担増、品質のばらつき、安全リスク、教育・研修コストの増大といった課題を解決するための重要なドキュメントです。
その操作マニュアルを作成する際にポイントとなるのが「手順の書き方」です。操作内容、操作の結果事象、注意事項、補足情報などの種類ごとに文章スタイルやデザインを使い分けることで、作業者が迷わず理解でき、安全性や信頼性が高まり、作業効率も向上します。
操作マニュアルは企業の現場を支え、組織課題を解消する戦略的な資産です。だからこそ、まずは手順の書き方を見直して、「伝わる」操作マニュアルにしませんか?
ここまで操作マニュアルの改善方法についてご紹介してきましたが、日常業務をこなしながら改善まで行う時間がないなど、改善のメリットは十分理解していても、現実問題としては難しい場合もあるかと思います。
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