取扱説明書の文章を洗練させる3つの書き方とは?
投稿日:2021年07月12日
カテゴリー:ライティング
投稿者:
Oma
取扱説明書の文章の書き方には、一定のルールが存在します。
ルールに則って作成された文章は、製品の特性や注意すべき点をユーザーに誤解なく伝え、誤操作を防ぐことができます。
この記事では、マニュアルに対して一定の基準を示している国際規格の記載をもとに、
取扱説明書の文章を洗練させる、3つのポイントについてご紹介します。
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1.分かりやすく、簡潔に書く
取扱説明書の文章は、
できる限り分かりやすく簡潔に記載することが望ましいとされています。
製品の機能などの情報を、余さず詳細に説明しようとすると、
つい複雑で長い書き方の説明文になってしまいがちです。
しかし、長い説明文は読み手であるユーザーに、読んでもらえなくなってしまう可能性があります。
あれもこれも、説明したい…!
という気持ちをぐっとこらえ、意識的に短くすることが大切です。
ここでライターテクニックをひとつ。
まずは、書くべきと思ったことを網羅的に書きます。
そのままでは、文量が多すぎたり、情報が重複していたり、
逆にユーザーにとって必要な情報が欠けてしまっていたりします。
そこで、次に「ユーザーが知るべき情報は何か?」に絞って全体を俯瞰し、
不要な文言をどんどん削ったり、足りなかった部分を足したり、
順番を変えたりして、文章を整理し最適化していきます。
この作業を、推敲(すいこう)と言います。
ちょうど、丸太から彫刻を削り出していくような感覚です。
最初からきれいにまとまった説明文を書こうとすると、
時間ばかりが取られてしまい、また、必要な情報を取りこぼしてしまいがちです。
書くときは素早く、推敲をじっくり、を心がけてみてください。
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2.1つの文に1つの指示で書く
「簡潔に書く」の延長でもありますが、取扱説明書の説明文においては、
1文につき1つの指示、または最小限の(切り離せない)指示にすることが大切です。
具体的な例文で、違いを見てみましょう。
例)カップめんの作り方
× 1つの文に複数の指示が含まれている場合
「フタを1/3まで開け、A袋とB袋を取り出したあと、A袋の中身を入れて、お湯を内側の線まで注ぎ、フタを閉めて3分待ってからフタをすべて剥がし、B袋の中身を入れてかき混ぜます。」
〇 1つの文に最小限の指示を入れた場合
「1.フタを1/3まで開けて、A袋とB袋を取り出す
2.A袋の中身を入れる
3.お湯を内側の線まで注ぐ
4.フタを閉めて3分待つ
5.フタをすべて剥がす
6.B袋の中身を入れて、かき混ぜる」
違いが分かりやすいように少々極端な表現にしましたが、
上の例のように、1文にたくさんの指示(手順・動作)が詰め込まれていると、
たいへん読みにくい文章になります。
最近、手順の多い複雑な作り方のカップめんも増えてきましたよね。
食べる側の心理としては、「フタを開けてお湯を注ぐだけ!」とか、
そもそも手順が簡単なほうが間違えにくくて嬉しいですが、
作業手順を誤ると問題がある場合はそうもいきません。
「ちょっと複雑だけど、どうしてもこの手順を踏んでもらいたい…」
となれば、いかに読みやすく、理解しやすく書くかが重要になってくるわけです。
一続きの文章があると、
なんとなく「最後まで読まなきゃ!」という気持ちになってしまいます。
上の例を読んだ場合、
最初か最後しか頭に入らない方が多いのではないでしょうか。
全部覚えようとすると、「頑張って覚える」労力が必要になってしまいます。
カップめんを作りたい(なんなら今すぐ食べたい)だけなのに、
「よし、頑張って手順を覚えよう!」とわざわざ思う人は、あまりいませんよね。
下の例で示したように、1文につき最小限の指示にすることで、
分かりやすい手順の区切りが生まれます。
何気なく入れた手順番号にも、
「1を読んだから、次は2を読む」
と、読み手を作業の流れに沿って導いてくれる役割があります。
カップめんで例えてみましたが、
これはどのような製品の取扱説明書にも当てはまることです。
1文に色々と情報を詰め込みすぎていないか、いま一度表現を見直してみましょう。
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3.簡単な言葉づかいで書く
ここで言う「簡単な」とは、
要するに「複数の意味に解釈されることがない=誤解を招かない」ということです。
製品の説明において最も避けねばならないのは、
ユーザーに誤解を与えてしまうこと、間違った情報を伝えてしまうことです。
取扱説明書の国際規格の中では、いくつかのNG例が示されていますが、
ここでは実際にやりがちなNG表現を2つ取り上げてみます。
①:文は受動態ではなく能動態で書く
「スイッチが押されると、電源が入ります」
下線部がいわゆる受動態です。(受身形とも言います)
この文では、「スイッチ」が主語になっています。
「スイッチを押すと、電源が入ります」
こちらが能動態です。省略されていますが、「ユーザー」が主語です。
いずれの文も、内容は同じです。
ではなぜ、説明文において能動態が推奨されるのか?
それは、取扱説明書は製品を使用するユーザーの目線で記載するものだからです。
日本語は主語が省かれやすく、これが誤解を与える原因になりやすいのです。
ただ製品を主体に置いて説明しようとすると、
「スイッチが押される」のような表現になってしまいます。
対してユーザーは、「この製品を使うには、自分はどうすればよいか」が知りたくて、
取扱説明書を読もうとします。
読む方は無意識に「自分」を主語にして読むわけです。
取扱説明書を読んでいる時に「なんだか読みにくいなあ」と思われるポイントは、この主語のズレにあります。
取扱説明書は、万人に…とはいかなくとも、
大多数の人にとって読みやすいものであるべきです。
提供する側が「こういう意図で書いたから、汲み取って!」と思っても、
なかなか上手くはいかないものです。
小学校や中学校の国語のテストに出てくる「下線部の心情を述べよ」と同じです。
「そんなの、書いた人にしか分からないでしょ!」と思ったことはありませんか?
誤解を招かない表現とは、つまりユーザーに寄り添った表現にする、ということです。
特に手順を示す文章のときは、「主体はユーザーである」ことに気を付けてみてください。
②:二重否定を使わない
二重否定とは、否定をさらに否定する文章のことです。
これは、一般的な文章(例えば小説や広告のキャッチコピーなど)では
たいへん効果的な表現方法の1つです。
「できる」→「できないことは何一つ無い」
こんな感じで、否定を重ねることで、同じ意味でもより強い肯定文になるわけです。
取扱説明書でNGな「二重否定」は、例えば次のような文章です。
「窓を開けていない部屋では使用しないでください」
「電源プラグがしっかり差し込めていないときは電源を入れないでください」
とても、とても、回りくどい言い回しですよね。
言いたいことはなんとなく伝わりますが、
どういう行動をとればよいかは明確ではありません。
そもそも「なんとなく」しか伝わっていない時点で、説明文としてはアウトです。
1文の中に「ない」が2つ入っていたら、いったん立ち止まって推敲してみてください。
二重否定=肯定の言葉なので、必ず書き換えることができます。
「窓を開けていない部屋では使用しないでください」
→「窓を開けて使用してください」or「使用するときは窓を開けてください」
「電源プラグが確実に差し込めていないときは電源を入れないでください」
→「電源プラグを確実に差し込んでから、電源を入れてください」
内容は同じでも、書き方を少し変えることでユーザーがとるべき行動がハッキリしますし、
文章自体も短くなります。
これらを意識することで、ぐっとシンプルで分かりやすい文章になりますよ。
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さて、国際規格には、他にも様々な基準が示されています。
それらすべてを網羅して分かりやすい取扱説明書を作成するのは、
簡単なことではありません。
少なくとも、他の仕事の片手間にこなすことは難しいでしょう。
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貴社の取扱説明書の文章が今一つ洗練されていないと感じるときは、
ぜひご参考にしてみてください。