送り仮名の付け方のトリセツ|2分でわかる表記ルール
投稿日:2019年02月04日
カテゴリー:解説記事
投稿者:
マッサン
「送り仮名(おくりがな)」とは、
国語の仮名交じり文において、訓読み漢字の語尾に読みを添えることで、
読み方を明らかにし、誤読を避けやすくする目的で使われています。
送り仮名には、文化庁から告示されている、
『送り仮名の付け方』という基準が存在しています。
本記事ではその文化庁のルールをもとに、正しい送り仮名の付け方を解説します。
1. その送り仮名、間違っていませんか?
「本製品を取扱う際は、取り扱い説明書を参照の上、慎重に取り扱かってください。」
なんとも引っかかりのある、おかしな文章ですね。
よくよく見ると、下線部がそれぞれ異なる送り仮名となっています。
送り仮名の付け方があやふやだと、このような文章になってしまいかねません。
では、正しい送り仮名の付け方とは、一体どういったものなのでしょうか?
次の章から順を追って解説いたします。
2. 文化庁の定める「送り仮名の基本ルール」とは?
冒頭に申し上げました『送り仮名の付け方』は、昭和48年に「内閣告示第二号」として文化庁より告示されました。
その内容は、日本語の文章における明確な送り仮名の原則として、改定を重ねながら現在も広く使われています。
それによると、
“一般の社会生活において現代の国語を書き表すための送り仮名の付け方のよりどころを、次のように定める。”
(文化庁|『送り仮名の付け方』より抜粋)
として、制定された基本ルールは以下の通りです。
活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は,活用語尾を送る。
生きる 陥れる 考える 助ける
荒い 潔い 賢い 濃い
主だ
(文化庁|『送り仮名の付け方』より抜粋)
この「活用語尾」と呼ばれる下線で表された部分が、送り仮名ですね。
送り仮名の基本ルールを、文化庁の『送り仮名の付け方』では「本則」と言い表しています。
本則のルールとされている活用語尾は、文字から読み取れる通りの意味で、
ずばり、「活用する部分を語尾に送る」ということです。
この「活用」とは、中学校の国語の授業で習った「五段活用」のことを指しています。
具体的には次のとおりです。
扱わない
扱います
扱うとき
扱えば
扱おう
「扱う」の五段活用は「ワ行五段活用」となりますので、
漢字の「扱(=あつか)」は固定、それ以下の読みが活用する部分です。
ということで、先ほど挙げた例文の「取り扱かってください」は誤りで、
正しくは「取り扱ってください」ということになります。
ちなみに、文化庁ルールではこの本則に対して、例外、許容についても言及があります。
例外
本則には合わないが、慣用として行われていると認められるものであって、
本則によらず、これによるものを、例外として示しています。
例:活用のある語のうち、語幹が「し」で終わる形容詞は、「し」から送る 。
著しい,惜しい,悔しい,恋しい, 珍しい
許容
本則による形とともに、慣用として行われていると認められるものであって、
本則以外に、これによってよいものを、許容として示しています。
例:次の語は、()の中に示すように、活用語尾の前の音節から送ることができる 。
表す(表わす), 著す(著わす),現れる(現われる),断る(断わる), 賜る(賜わる)
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3. 「複合の語」の送り仮名ルール
「複合の語」とは、送り仮名を使う複数の言葉が組み合わさった言葉を指します。
例文の「取り扱い」がそれにあたり、動詞の「取る」と「扱う」が組み合わさることで、一つの動作を示しているわけです。
この「複合の語」は本則の基本ルールに加え、様々な例外があるため不統一になりやすいことが特徴です。
例:取り扱い/取扱い/取扱
ちなみに、複合の語について文化庁の『送り仮名の付け方』では、
“その複合の語を書き表す漢字の、それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による”
(文化庁|『送り仮名の付け方』より抜粋)
と本則が記載されています。
難しい文で書かれていて分かりづらいですが、要するに、分解して、考えてください、ということです。
具体的には次のとおり。
取らない
取ります
取るとき
取れば
取ろう
というわけで、「取る」はラ行五段活用で、「取(=と)」は固定、それ以下が活用する部分です。
前項での「扱う」と組み合わせて、「取り扱う」が正しい表記となります。
4. 名詞の送り仮名はどうするの?
では、名詞の場合はどうすればよいのでしょう?
先に述べたルールに従えば、「取扱説明書」は間違いで、「取り扱い説明書」としなければならないのでしょうか?
名詞については、通則で「複合の語のうち、次のような名詞は、慣用に従って、送り仮名を付けない」とされています。
その慣用の例の中には「取扱」も挙げられています。
というわけで、送り仮名を含む語句を名詞として使う場合、送り仮名は省略することができます。
この通則に則ると、先の例文にあった「取り扱い説明書」という部分は、
「取扱説明書」に置き換えるのが正しい、ということになります。
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5. まとめ
さて、ここまで送り仮名の付け方について、
文化庁が公示したオフィシャルなルールを解説してきましたが、
とはいえ、「正しい表記」以外の送り仮名は絶対に使ってはならない!
ということではありません。
そもそも、文化庁ルールでは慣用表現による例外が認められています。
その送り仮名の付け方が、一般的に浸透しているのであれば、
「取り扱う」を「取扱う」というように、送り仮名を省く表記にしてしまっても、問題はないのです。
肝心なのは同じドキュメント内での表記を統一させることです。
同じ文章の中で、送り仮名の付け方に「ゆれ」があると、
それだけで読み手から不信感を持たれてしまいます。
一度、不信感を持たれてしまったドキュメントは、どんなに素晴らしい内容が書かれていたとしても、穿った目で見られてしまうことになりかねません。
正確な日本語が求められるマニュアル制作の現場では、
これらの表記ゆれをスピーディにチェックするために、校正支援ツールを利用しています。
校正支援ツールを使うことで、誤った送り仮名になっていても、該当箇所を機械的に判別し、正しい送り仮名に置換することができます。
また、慣用表現によって省く漢字の送り仮名についても、辞書に登録することで対応が可能です。
最後になりましたが、
「マニュアル制作のトリセツ」では、
日本語の表記ルールについては文化庁が公表している日本語表記ルールをとりまとめた、
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全6章立ての資料となっていますので、ぜひご参考ください。