伝わる文章を書くために「やめる」べき4つの習慣
投稿日:2024年02月21日
カテゴリー:ライティング
投稿者:
Oma
普段、SNSやネット記事などを閲覧していると、
書き手が意図していない意味に解釈され、揚げ足を取られて炎上したり、
誤解された情報ばかりが広まってしまったり…
というケースをよく見かけます。
いかにも情報社会らしい問題ですが、個人的な肌感覚では、
最近特に顕著になってきたように思います。
こうした文章による誤解を招く原因としては、
まず、単純に文章が読みにくいことが挙げられるでしょう。
単語や文法の誤り、主語や目的語の脱落、修飾語と被修飾語の関係性が曖昧な書きぶりは、
「よく読めば分かるけど、ぱっと見では理解しにくい ≒ 誤解を招きやすい」文章を生み出します。
特にネット記事のような、短時間でささっと情報を知りたい文書の場合、
分かる単語や目につく単語を拾い読みされる可能性が高く、
結果的に書き手が思ってもみない解釈をされてしまうことが多いのでしょう。
しかし、原因は書き手側だけにあるわけではありません。
読む人によっては、文章の背景にある事情を知らなかったり、
見出しや要約文など目につくところだけを読み、本文を読んでいなかったり…といったように、
読み手側の読みかたが原因で、誤解が生じることもあります。
マニュアルも、実はSNSなどと同様の危険をはらんでいます。
「必要な情報にすぐアクセスするためのもの」という特性が、マニュアルにはあります。
小説や漫画などのように「読む」ことそのものが目的ではないので、
最初から最後までじっくり読まれることは少ないでしょう。
もちろん、どんなに丁寧に書いたとしても、完璧に読み間違いを防ぐことは難しいです。
しかし、少しの配慮をプラスすることで、
多くの人に誤解されにくい文章を書くことができます。
本記事では、
マニュアルなどの実用文を書くときや推敲するときに気を付けたいことを、
4つの項目に分けて紹介しています。
※実践的な方法というよりは、普段から意識したい考え方を筆者視点でご紹介するものです。今すぐ実践したい、具体的なテクニックが知りたい方は、こちらの記事もご参考にどうぞ。
難しい言葉を「なんとなく」使わない
メール文や資料を作るとき、マニュアルを書くとき、
なんとなく使っている言葉はありませんか?
たとえば、
「すべからく」という、よく誤用される言葉があります。
A:マニュアルはすべからく製品に付属するものだ。
B:マニュアルはすべからく読むべきだ。
この2つの例文のうち、片方は誤用です。
こっちが間違いだ、とあなたは自信を持って言えますか?
正しく使っているのはB、誤っているのはAです。
「すべからく」は、
「当然○○したほうがいい、するべきだ」という意味を持つ言葉で、
「~すべき」という受けの言葉と組み合わせて使うことが多いです。
Bを言い換えると、「マニュアルはぜひとも読んだほうがいい」となります。
Aの文で言いたいのは、
「マニュアルはすべての製品に付属している」ということなのですが、
「すべからく」には「すべて」といった意味はありません。
誤用の原因は、単純に言葉の雰囲気が似ていることや、
本来の意味で使われている「すべからく」を「すべて」に言い換えても
およそ通じてしまうために勘違いしてしまったことなどではないかと言われています。
物事を正しく伝えるための第一歩は、言葉を正しく使うことです。
言葉の意味に自信が持てないときは、
面倒がらず辞書を引く癖をつけるようにしましょう。
また、そもそも、
自分で意味を説明できない言葉は、実用文ではなるべく使わないほうがベターです。
日常会話では、このような誤用はあまり問題にはなりません。
何故なら、その場の文脈や雰囲気、発言のニュアンスなどが理解を助けてくれるからです。
「このようなポジション、私にはとても役不足です…!」
と遠慮がちに言った人に対して、腹を立てる人は少ないでしょう。
お互いに(或いはどちらかが)「役不足」という言葉を誤って理解していても、
言いたいことは伝わるので、コミュニケーションは成立します。
ところが文字情報の場合は、
いつ、どんな状況で、誰が、どんな読みかたをするのかを、
書き手側がコントロールすることはできません。
多くの人が誤解なく読める言葉が他にあるなら、
積極的にそちらを使うようにしましょう。
「すべての」という言葉が適しているのであれば、
敢えて「すべからく」を使ってみる必要はないのです。
言葉がうまく思いつかないときは、
類語(同義語、言い換え)や反対語(対義語)を検索してみましょう。
大切なのは、自分のなかの語彙が豊富かどうかではなく、
適切な言葉選びができるかどうかです。
(もちろん、引き出しが多いに越したことはありませんが)
なお、書きながら一つ一つ検証するのはおすすめしません。
文を推敲する際のチェックポイントの一つにすると良いでしょう。
▼参考記事 |
根拠や理由を省かない
マニュアルは、製品の使い方や作業のしかたを示すものですが、
言い方を変えると、ユーザーの行動を促すためのもの、とも言えます。
「こう扱ってほしい」
「これは絶対にやってはいけない」
「この順番で操作してほしい」
など、よくよく考えればマニュアルは指示だらけです。
少し大げさな言い方になりますが、
他人からの一方的な指示に従うのは、大なり小なり心理的な抵抗感を伴うものです。
「このスイッチを押すな!」
と書かれている大きなスイッチが目の前にあったら、
「なんで押しちゃダメなの?」と思いますよね。
それどころか、「なんでダメなのか気になる、押してみたい!」と思うかもしれません。
しかしそこに、
「スイッチを押すとデータがすべて消えます」と書かれていたらどうでしょうか。
押してはいけない理由がはっきりするので、
モヤモヤとした抵抗感は無くなるはずです。
人が何らかの行動をするには、ある程度の納得感が必要です。
また、理由や根拠が明確であれば記憶にも残りやすくなります。
はじめて製品を使うときはマニュアルを読むとしても、
2回目以降はほとんど読まれないものです。
しかし、指示と理由が紐づいていると、
「そういえば、このスイッチは押しちゃいけないんだったな」と
思い出しやすくなります。
マニュアルを書くうえで特にこれを意識したいのは、
安全上の注意に関わる部分です。
ダメなものはダメ!とするのではなく、
「こういう危険があるから注意して」と、理由を具体的に明記すると、
確実に伝えたい重要な注意喚起が、より読み手に届きやすくなります。
読み手を不安にさせない
マニュアルを書くうえでは、
「ユーザー目線で書く」ことがとても大切です。
…というのはよく言われることですが、
説明対象を熟知している立場からユーザーの目線を確保するのは、とても難しいものです。
どこをどうすれば何ができるのか、
どういう状態が正解なのかも、すべて分かってしまっているからです。
私がいつも実践している考え方の一つに、
「読み手が不安に思うかどうか」という視点があります。
たとえば、見たことも食べたこともないお菓子を作る場面を想像してみてください。
【カイザーシュマーレンのレシピ】
①:卵黄、牛乳、粉類を合わせたものを混ぜる
②:卵白を泡立ててメレンゲにする
③:バターをフライパンに塗っておく
④:①②を混ぜ合わせた生地を流し入れて、焼けてきたら一口大に切る
⑤:粉糖をかけたら完成!
さて、レシピから完成形はイメージできたでしょうか?
また、実際に作るとなったら、
「混ぜるって、どの程度?」
「メレンゲの硬さはどれくらい?」
「どれくらい焼けていればいいの?」
など、作業上不安になるポイントがたくさん出てくることでしょう。
生地をフライパンの中でぶつ切りにするイメージが湧いた人は、きっと少ないと思います。
(実際にあるお菓子なので、気になった方はぜひ検索してみてください)
作り手の不安を無くすには、次のような工夫が考えられます。
・完成イメージ(写真)、味や食感などの情報を冒頭で示しておく
・一工程ごとに、生地の状態が分かる写真を載せる
・よくある失敗例と回避のしかたを載せる
これらに共通するのは「ゴールを示す」ということです。
この時点で/最終的に、この状態になっていればOK!ということを
適宜分かりやすく示すことで、ゴールがイメージしやすくなり、
ユーザーは不安なく作業を進めることができるようになります。
▼参考記事 |
読み手に甘えない
もう一つ、ユーザー目線を確保したいときに気を付けたいのは
読み手の読解力に甘えないことです。
これくらいのことは省いてあっても分かるだろう、
隅から隅までちゃんと読めば分かるから良いだろう、
という考えは、読み手にとって親切とは言えません。
特に、情報の省略は慎重に行うべきです。
省略された部分の補完が読み手に委ねられると、
書き手側の意図と異なる解釈をされ、誤解を招く原因になってしまいます。
福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という名言は、
まさに省略によって誤解を招いてしまっている有名な例ですよね。
どこまで詳しく書くか、省略するか、という匙加減は非常に難しいものです。
(私も常に頭を悩ませているポイントです)
しかし少なくとも、
「書くべきか、書かなくていいか」を迷ったときは、
なるべく書いたほうが良いと私は考えています。
自分のなかでは当然のことでも、読み手が同様に当然と思うかどうか、
という視点は常に持っておきたいところです。
まとめ:伝わる文章を書くために「やめる」べき4つの習慣
ここまで、4つのポイントをご紹介しました。
■ 難しい言葉を「なんとなく」使わない
迷ったときは、辞書を引いたり、類語などを調べたりする
なるべく分かりやすい言葉を選ぶ
■ 根拠や理由を省かない
根拠や理由を付けることで、より効果的に行動を促す
■読み手を不安にさせない
操作や作業のゴール(正解)を示すことで、不安感を取り除く
■ 読み手に甘えない
情報を無暗に省略しないことで、誤解のリスクを減らす
いかがでしょうか?
これらのついやってしまいがちな習慣を見直すだけでも、
文章の伝わりやすさはかなりアップすると思います。
ただ、「見直すだけ」とは言っても簡単なことではないかもしれません。
どの程度平易な言葉にするべきなのか、
どこまで省かないで書くべきなのか…などは非常に難しい問題です。
特に、一度自分で作り上げたマニュアルは、客観的な目で評価しにくいものです。
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自分で作成したマニュアルには、どうしても盲点が生じがちなものです。
とはいえ、そのままにしておくわけにはいきませんよね。
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