わかりやすいマニュアルの作り方|作成時に役立つ5つのポイントとは?
投稿日:2024年10月31日
カテゴリー:レビュー
投稿者:
みちこ
マニュアルは大前提として「正しい」情報が求められます。
しかし、「正しい」ことは「分かりやすい」ことには直結しません。
いくら正しい情報を記載したとしても、内容が読み手に伝わらなければ意味がありません。
本記事では、マニュアルの作成業務に役立つ、
「わかりやすいマニュアル」の作り方のポイントをご紹介します。
「わかりやすいマニュアル」の条件とは?
わかりやすいマニュアルの作り方
①:説明の流れを適切に、わかりやすくするポイント
②:情報がどこに書いてあるか、わかりやすくするポイント
③:説明文を端的に、わかりやすくするポイント
④:図やイラストで、わかりやすくするポイント
⑤:レイアウトを整理し、わかりやすくするポイント
わかりやすいマニュアルの作り方・まとめ
「わかりやすいマニュアル」の条件とは?
そもそも、わかりやすいマニュアルとは、
具体的にどういったマニュアルを指すのでしょうか?
ふわっとしたイメージはあっても、
「わかりやすい理想のマニュアルはこれだ!」と、
具体的な条件や指針をはっきり自信を持って言える人はあまりいないのではないでしょうか。
逆に考えてみましょう。
あなたが「このマニュアルはわかりにくい!」と思うのはどんな時でしょうか?
今まで読んだことのあるマニュアルを思い出してみれば、
思い当たるものが結構出てくると思います。
いくつか例を挙げてみましょう。
・説明が飛び飛びで、わかりづらい |
・知りたい情報がどこに書いてあるのか、わかりづらい |
・長文の説明が多くて、わかりづらい |
・文字ばかりで、わかりづらい |
・レイアウトがバラバラで、わかりづらい |
いずれも、実際に自分が使うことを考えると、
積極的に読みたいと思えるマニュアルではありませんよね。
では、これらの「わかりにくいマニュアルの条件」を、
「わかりやすい条件」に逆転させてみましょう。
・説明が飛び飛びで、わかりづらい →説明の流れが適切で、わかりやすい |
・知りたい情報がどこに書いてあるのか、わかりづらい →知りたい情報がどこに書いてあるか、わかりやすい |
・長文の説明が多くて、わかりづらい →説明文が端的で、わかりやすい |
・文字ばかりで、わかりづらい →図やイラストが多く、わかりやすい |
・レイアウトがバラバラで、わかりづらい →レイアウトが整理されていて、わかりやすい |
ちょっとした思考ゲームのような方法ですが、
これでわかりやすいマニュアルの条件や指針が、かなり明確になったのではないでしょうか?
次のセクションでは、この5つの例をもとに
「わかりやすいマニュアル」を作るポイントについて詳しく解説します。
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わかりやすいマニュアルの作り方
先ほど、わかりやすいマニュアルを作成するポイントとして、5つの例を挙げました。
・説明の流れが適切で、わかりやすい |
・知りたい情報がどこに書いてあるか、わかりやすい |
・説明文が端的で、わかりやすい |
・図やイラストが多く、わかりやすい |
・レイアウトが整理されていて、わかりやすい |
では、この5つの例をもとに品質の高い「わかりやすいマニュアル」を作るには、
どのようにすればよいでしょうか?
それぞれを詳しく見てみましょう。
①:説明の流れを適切に、わかりやすくするポイント
説明の流れを適切に、わかりやすくするには作成するマニュアルが、
「ユーザーシナリオに沿っているか」が重要です。
ユーザーシナリオとは、
ユーザー(主にマニュアルの読者)が目的を達成するための行動や流れを、
5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように)を
ストーリーとして具体化したもののことを指します。
ユーザーシナリオに沿ったマニュアルを作成するためには、
まずマニュアル全体の設計段階で、
「このマニュアルは誰に向けたもので、どんな目的で利用されるのか」を
基本の流れを明確に想定して進める必要があります。
(このとき想定する具体的なユーザー像のことを「ペルソナ」と呼びます)
「必要なことが書いてあればなんでもよいのでは?」
と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
それは、なぜでしょうか?
ユーザーシナリオを想定せずに作った場合、例えば次のような問題が起こるでしょう。
「説明書を完全にWebマニュアル化しました!」
→「電波の届かない場所で読む必要があるのに…」
「社員の教育に必要なビジネスのノウハウやナレッジを網羅しました!」
→「初めて使うから専門的な用語が理解できない…」
「使ってほしい機能を最初のページに詳しく記載しました!」
→「電源の入れ方はどこに書いてあるんだろう…」
ユーザーシナリオの想定をせず、作り手の思うままにマニュアル作成を進めてしまうと、
例のように作り手と読み手の間にギャップが生まれ、
結果として、実際の使用シーンではうまく活用されないものになってしまう可能性があります。
例えば、家電の取扱説明書などにおいて、
スタートアップガイドやメンテナンスガイドなど、
取扱説明書とは別にさまざまな冊子が同梱されている場合がありますよね。
これは、初めて製品を扱うときや、日常のお手入れをするときなど、
ユーザーの利用シーンに合わせたマニュアルをそれぞれ提供するための工夫です。
このように、ユーザーシナリオをきちんと想定することで、
ユーザーに「分かりやすい!」と感じてもらえる良いマニュアルを作ることができます。
それだけでなく、メーカーにとっても、ブランディングの向上やリピーターの創出、
ユーザーの自己解決率の向上によるサポート対応の代行・負担削減といった
多くのメリットがあります。
▼参考記事 |
②:情報がどこに書いてあるか、わかりやすくするポイント
「マニュアルには重要なことしか書いてないから、
使う前に一字一句しっかり読んでほしい!」
そう思うのが作成者の心情ではありますが、
マニュアルが隅々まで読まれるケースというのは、あまり多くありません。
ご自身がマニュアルを読む場面を思い返してみてください。
特にマニュアルが必要とされるシーンは、大きく分けて3つ考えられます。
① 初めてその製品(業務)に触れるとき
② 製品(業務)でわからない操作・コトがあったとき
③ トラブルや不具合があったとき
いずれの場合にも共通するのは、
読み手は「正確な情報(使い方)だけを、今すぐ、効率よく知りたい」状況にある、
ということです。
このような状況で、マニュアルをめくって1ページ目から順に読もう…
とする人は、まずいませんよね。
「電源の入れ方がわからない」
「変な音がするけど大丈夫かな?」
など、知りたいことが具体的にあり、それ以外の情報を読む必要はないわけです。
ピンポイントに知りたい情報にたどり着くには、
冊子の場合、目次や見出し、インデックス(ツメ)などを頼りに探すことになります。
[使い方―システムの更新]
「故障かな?と思ったら]
このようなわかりやすい見出しがあれば、
ユーザーは「この項目に欲しい情報が書いてあるだろう」とすぐに判断でき、
迷わずにアクセスすることができますよね。
欲しい情報がスムーズに見つけられる、
つまり検索性(ファインダビリティ)が高い便利さは、
「わかりやすいマニュアル」にとって必要不可欠な要素であるといえます。
▼参考記事 |
③:説明文を端的に、わかりやすくするポイント
複雑な操作を説明する際、つい長文を書きすぎることはありませんか?
先ほどの項目でも触れたように、マニュアルの読み手は、
なるべく時間や手間をかけずに知りたい情報だけを欲する傾向にあります。
そういった背景を踏まえると、
長文がマニュアルに適していないことは明らかですよね。
たとえ重要な情報が盛り込んで書き出されていたとしても、
まるっと読み飛ばされてしまっては元も子もありません。
ユーザーに読んでもらいやすい、わかりやすい文を書きたい場合に有効なのが、
「テクニカルライティング」という技術です。
あまり聞きなじみがない言葉かもしれませんが、
マニュアルのような技術文書の作成において、
必要な情報を正しくわかりやすく伝えるために欠かすことができない技術です。
ここからは具体的な例を元に、
テクニカルライティングを意識するとどうなるかを見てみましょう。
例A:
熱したフライパンに油をひいて、卵を割り入れ少量の水を投入した後、ふたをして弱火でしばらく待つ。 |
これは目玉焼きの作り方を説明した文です。
普段から目玉焼きを作っている人であれば、特に問題なく読めるかもしれません。
しかし、初めて目玉焼きに挑戦する人が、
これを読みながら調理するとしたら、いかがでしょうか?
「油をひいて…卵を入れて…ふたをする?いや、その前に水が必要?
・・・あれ、どこまで読んだっけ?」
「少量の水ってどれくらい?しばらくっていつまで待てばいいの?」
一文に工程がすべて詰まっているので、
目を離したら、またはじめから読まないといけませんよね。
また、「少量」「しばらく」など、
読み手によって解釈に幅のある指示が複数あります。
これでは、ユーザーにとって優しい文であるとは言えません。
これは余談ですが、手順書などの文を書く上で解釈に幅のある指示は、
意図しないトラブルの発生や、ミス・漏れなどにつながる恐れがあります。
指示は必ず明確に、を心がけましょう。
それでは、今度はテクニカルライティングの手法を使って、
今の例を整えてみましょう。
例B:
目玉焼きの作り方 |
1. フライパンを熱して、油(大さじ1/2)をひく |
2. 卵をフライパンに割り入れる |
3. 水(大さじ1)を入れる |
4. ふたをして、弱火で2分加熱する |
改善ポイントは主に3つです。
①:見出しをつける
見出しによって、何について書かれた文かが明確になりました。
同じページに色々なレシピが載っていたとしても、
視認しやすく、すぐに見つけることができます。
②:手順番号をつける
箇条書きに手順番号を振って、手順をステップごとに細かく区切ることで、
自分が今何をすべきなのか、どこまでやったのか時系列がわかりやすくなります。
一文に対して1つの内容を書くことを、
「一文一義(一文一意)」と言います。
③:具体的な数字で説明する
必要な油や水の量をあらかじめ明確な数字で表すことで、
作業者によるブレが少なくなり、
初心者が行なってもおよそ均一な仕上がりに導くことができます。
いかがでしょうか?
内容が同じ文章でも、漫然と手順を書き並べるのと、
テクニカルライティングのルールを意識して説明するのとでは、
読みやすさが大きく変わります。
マニュアルを書くうえでは、
正しい内容・知識で記載されていればそれでよい、ということはありません。
いかに読みやすく、誤解を招きにくい文であるかどうかも非常に大切なポイントです。
テクニカルライティングについて、
もっと詳しい内容を知りたい方は下記の記事をご覧ください。
▼参考記事 |
④:図やイラストで、わかりやすくするポイント
検索性も良くなったし、わかりやすい文になったから、これで完成!
…ということはありません。
いかに読みやすいと言っても、
文字情報だけで複雑な情報を100%伝えるというのは難しい話です。
適切な図表やイラスト、写真などの画像を挿入することによって、
文だけでは表現しにくい情報を、視覚的に伝えやすくすることができます。
それだけでなく、文を読む手間や、
読み間違いなどによる誤解を減らすことにも繋がります。
極端な例では、プラモデルや家具の組み立て説明書など、
紙面のほとんどをイラストが占めているものもありますよね。
下のイラストを見てみましょう
このように、説明文を読まずともイラストを見ただけで
操作の内容や全体像が一目で「わかる」のが、イラストを使用するメリットです。
製品マニュアルなどによく用いられる、
シンプルな線や塗りで表現されたイラストのことを、
「テクニカルイラスト」と言います。
テクニカルイラストは、
技術的な性質の情報を視覚的に伝達することを得意としています。
しかし、むやみやたらとイラストを使えばよいというものでもありません。
注意点として、
イラストは視線を集めやすい効果があるため、
かえって他の重要な情報が埋もれてしまう可能性もあります。
イラストの方が表現しやすいこともあれば、
テキストの方が理解を高めることもあります。
それぞれの特徴を理解し、メリットとデメリットを鑑みて、
どんな伝え方が適切かを確認して決め、どのような構成にするのか判断することも、
マニュアル作成のうえでは非常に重要です。
▼参考記事 |
⑤:レイアウトを整理し、わかりやすくするポイント
マニュアルを「わかりやすい」と感じさせるためには、
ユーザーにとって「見やすい」ことも必要です。
マニュアルを開いたときに、
ページいっぱいにぎっちりと文字が詰め込まれていたり、
情報が煩雑で求めている情報がすぐに見つけられなかったりと、
見づらいマニュアルは途端に読む気が失せてしまいますよね。
逆に、レイアウトが整っていて「見やすい」状態であれば、
それだけでもマニュアルを読むハードルはぐっと下がります。
そのため、ストレスを感じさせないレイアウトになっていれば、
利用者は欲しい情報だけを迷わずに把握することができますし、
読み手の理解度アップやストレスの軽減に繋がります。
マニュアルには色々な要素がありますが、
新しくマニュアルを作成する時はもちろん、
何らかのタイミングでマニュアルの改善に取り組む場合でも、
「レイアウトをどうするか」というのは、とりわけ注目されやすい部分です。
しかし、そこに一定の指標がないと、
作成者本位な(ユーザーにとっては使いにくい)レイアウトになってしまったり、
編集時にどんどんレイアウトが崩れていってしまったりして、失敗しやすいものです。
ここで、レイアウトを改善するおすすめのポイントを3つご紹介します。
レイアウトに困ったときは、まずこの3つを見直してみてください。
レイアウトのコツ ①:オブジェクトの整理・整列
オブジェクト、つまり紙面(画面)を構成する要素(見出し・文・イラストなど)を整理します。
使用する色やフォントの種類を統一したり、
各オブジェクトの配置や余白を整えたりします。
本文の開始位置にしろ、図にしろ、端がそろっていると、
それだけで「情報が整理されている」とユーザーから直感的に思ってもらえます。
レイアウトのコツ ②:情報の整理
ひとつのマニュアル内、もしくはある1ページの中で、
関連する要素が散らばって配置されていたり、
統一感が薄かったりすると、何となくわかりにくそうだと思わせる影響を与えます。
・関連する要素を近くに配置する
・背景色を関連項目ごとに統一する
といったグルーピングを行うことで、
視覚的に「ひとまとまりの情報である」ということを伝えることができます。
レイアウトのコツ ③:視線の流れ
紙面が横書きの場合、人の視線は[左上→右上→左下→右下]の方向に、
つまり「Z」の字を描くように自然と流れていきます。
これを「Zの法則」と言います。
Zの順にレイアウトすると人の視線の流れと同じになり、
読み手に「見やすい」と感じてもらいやすくなります。
これらレイアウトのコツについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてみてください。
わかりやすいマニュアルの作り方・まとめ
ここまで、わかりやすいマニュアルの作り方について詳細に解説してきました。
おさらいを兼ねて、要点を箇条書きでまとめてみましょう。
「わかりやすいマニュアル」の作るための要素は大きく5つです。
★ 説明の流れを適切に、わかりやすくするポイント
利用者が目標を達成するための行動や、
流れを具体化する『ユーザーシナリオに沿うこと』
★ 情報がどこに書いてあるか、わかりやすくするポイント
利用者の欲しい情報がスムーズに拾えるようにする『ファインダビリティ』
★ 説明文を端的に、わかりやすくするポイント
利用者に負担を感じさせない、
簡潔で伝わりやすい文章にする『テクニカルライティング』
★ 図やイラストで、わかりやすくするポイント
イラストを用いて視覚的に情報を伝達し、
利用者の理解を促す『テクニカルイラスト』
★ レイアウトを整理するポイント
オブジェクトと情報を整理し、
視線の流れに沿って配置する『レイアウトの設計』
ちなみに、この5つの要素は、
弊社が提供している『マニュアル健康診断』というサービスの評価基準の一部にもなっています。
『マニュアル健康診断』とは、
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マニュアル制作を得意とする複数名のエキスパートが、
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